「正直、答えを与えるコンサル的なアプローチは好きではありませんでした」
一般社団法人塩尻市振興公社の理事を務める太田幸一氏は、率直にそう語る。大手コンサルティングファームに対する不信の理由は明確だった。
「地方創生の文脈で何を生み出せるのかよくわからなかった。儲かっている企業をさらに儲けさせることが中心だと思っていたので、地方創生の領域で何ができるのだろうと。入ってきても、構造化されたモデルを示して『これをやってください』と言うだけでは進まない。いろんなしがらみがあるのが地方の実態で、言われたことができれば苦労しないんです」
そんな太田氏とLiMiNALコンサルティング株式会社(以下、LiMiNAL社)の出会いは、太田氏の先入観を大きく覆すものとなった。
※本記事は、2025年8月12日時点での対話・インタビュー内容をもとに構成しています。
参加者

北山
LiMiNAL 代表取締役

太田
一般社団法人塩尻市振興公社 理事
「答えを出さない」コンサルティングスタイル
太田
LiMiNAL社のやり方は、最初は違和感がありました。従来のコンサルタントとは全然違いますから。
北山
従来のコンサルティングは技術的課題、つまり現状と理想のギャップを埋める施策で解決できる課題に焦点を当てがちです。でも実際は、人の心理状態や価値観、恐れといったものが課題に必ず紐づいている。そこも含めて取り扱うのが、私たちの「YURAモデル」です。
太田
「YURAモデル」って、どういうものですか?
北山
現状と理想を設定するのは従来と同じなんですが、それに向かって行動し始めると、うまくいかないことや不安に思うこと、いろんな揺らぎが出てきます。その揺らぎを紐解いて、「自分ってこういう思考回路なんだ」「自社の組織ってこういう特性なんだ」ということを受容する。受容したら見えてくる世界が変わって、新たな統合ができる。そこにパワーが生まれるんです。
太田
それって、フォアキャスト(現状の積み上げ式)とバックキャスト(未来からの逆算式)をうまく融合している感じですね。うちのチームも最初はバックキャスト思考で一気に進んだんですが、やはり限界が出てきて。どちらかに偏るのではなく、出てきた問題に合わせて使い分けているということですか?
北山
まさにそうです。ビジネスはスピードが速いので、現状も変わるし、みんなの関心も違うし、今一番困っていることも変わる。1週間前に考えた「これをやろう」は次の週には状況にあっていない可能性がある。状況の変化に柔軟に変更していく方がうまくいくんですよね。
太田
知識量やノウハウから言えば、北山さんが答えを出してもいいのに、あえて答えを出さずに、決定権を全部こちらに委ねてくれる。最初はその即時的な答えが欲しかったので、正直もどかしかった。
でも今にして思えば、そこが一番重要だったんだなとわかります。
北山
「答えちょうだい」っていうタイプの人には合わないコンサルティングスタイルかもしれませんね。
太田
そうですね。人によっては最初、ドライって捉えるかもしれませんね。突き放されている感じとまではいかないけれど、自分たちで決めなきゃいけないという環境が、特にリーダー層に大きな効果をもたらしました。入ってもらって一番効果があったのはリーダーだと思います。
自ら答えを導き出したいけど、考え方がわからない、どこに重きを置いたらいいかわからないと模索している人には最適だと感じました。

管理職未経験リーダーの成長ストーリー
北山
印象的だったのは、新任リーダーAさんの変化でした。
太田
Aさんは管理職業務未経験で、マネジメントのノウハウもわからず、いろいろとプロジェクトでうまくいかないことが起きていました。正直、KADOに合わないのかと思った時期もあったんですよ。
北山
最初は自信がなくて「これでいいのかな」とわからなかったものを、壁打ちする中で、「これでやっぱりいいのか」って自信を持って発信できるようになったと思います。
太田
実際、北山さんに入ってもらって良かったのは「リーダーの役割を変えずに任せ続けると判断できた」ではないかな、と思うくらいです。
今では振興公社の運営を担う重要なリーダーとして成長してくれました。自分の役割をちゃんと理解していて、コアメンバーの一員として完全に機能している。また、多分Aさん自身は北山さんに育ててもらったという意識がないのが素晴らしいですね。
北山
それがまさに「YURAモデル」の「受容」の部分ですね。一時的に承認欲求を満たしてあげるだけだと、人って変われない。自分で自分自身を受容できると、行動も考え方も徐々に変わってくる。
太田
今話を聞いていても、ある意味「ナッジ(=人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法)」だなと思って。完璧な答えが用意されて、計画通りやれば一時的にはできるかもしれないが続かないけれど、自分が気づかないうちにチャレンジしてクリアしていくと、次が繋がっていく。
北山
そうですね。最終的には自走した姿が見たい、という気持ちで向き合っています。
太田
自立的な成長ってどうやって起こるんだろうってずっと思っていました。機会を与えられないと成長しないのではなく、自分でどんどん機会を作って変わっていく。北山さんがやってくれたのは、一番最初の回転が始まる瞬間だったと思います。
太田
北山さんに入ってもらったのが、まさにそのタイミングでしたね。KADOが第二創業的に伸び始めた時期で、さまざまなハレーションが起きたときだったからこそ、最大限の効果を発揮してもらえたと思っています。課題が何もないときだと変化を感じられなかったでしょうし、取り返しがつかなくなってからでは遅かったと思います。
北山
はい、いいタイミングだったと思います。
太田
本当に感謝しかありません。今は組織として機能している感じが出てきました。
組織を変えるくさびになる人材を生み出すこともできるし、チーム全体として、タレントがいなくてもちょっとずつ変わっていくこともできる。LiMiNALコンサルティングの手法が他の組織でも展開されることで、多くの人材と組織が変化していくのではないでしょうか。その可能性を強く感じています。
北山
ありがとうございます!今後も多くの組織で、YURAモデルの伴走スタイルを展開していきたいと考えています。
正解を提示するのではなく、問いを投げかける。決めてもらうのではなく、自ら決める力を信じる。
一見もどかしく映るこのスタイルこそが、リーダー自身の思考を深め、組織にとっての「自走」の第一歩を生み出しました。
変化は与えられるものではなく、自らの内側から立ち上がるもの。
LiMiNALコンサルティングの伴走は、その最初の回転を静かに後押しする存在なのかもしれません。
(後編に続く)
