「つかれない社会」の実現を目指すLiMiNALコンサルティング。代表の中北氏が語るのは、対話を通じた組織変革の可能性です。
毎日2回のミーティングで経営を進め、時には激しい議論も——
自身の挫折体験から対話の力に気づいた中北氏が、現場に入り込むアプローチ「YURAモデル」で多くの組織を変えてきた背景には、人間らしさを大切にする哲学がある。組織運営や人間関係に悩むすべての人に贈る、本音で語り合うことの意味を探ります。
参加者

インタビュアー
鈴木
入社予定(インタビュー当時)

インタビュイー
中北
LiMiNAL 代表取締役
偶然の出会いから始まった共同創業
まずは、創業のきっかけについてお伺いします。最初は中北さんから北山さんに声をかけたと聞いていますが、そのときからビジョンみたいなものはあったのですか?
実は、声をかけたタイミングでは明確なビジョンがあったわけではないんです。4年前にあるプロジェクトで出会って以来、北山さんとは仕事を共にする機会が多くて。お互いの仕事ぶりや考え方を知っている中で、「この人と一緒にやったら面白い世界を描けるだろうな」という感覚的な確信がありました。
北山さんに声をかけたときも、めちゃくちゃ勇気を振り絞って…というよりは、すごく軽いテンションで「会社やらない?」って伝えたんです。そしたら北山さんも「やろうか」ってその場で答えてくれて。なんというか、どちらも必然と思っていたというか。こうなる流れだったのかもしれませんね。
なるほど、感覚的な一致から始まったんですね。北山さんとは2年ぐらい前からセミナーなども一緒にやられていたんですよね。
そうです。最初のプロジェクトは10ヶ月ほどで終わったんですが、その後も継続的に話をしていました。僕が自身の会社を創業してから、北山さんとは一緒にできることがあればいいよね、という感じで自然に協業していたんです。

毎日2回の対話で経営を進める
普段から2人は対話的なことをしているんですか?
毎日1時間×2回のミーティング時間をセットしています。朝と夕方、例えば10時から11時と夕方にという感じで。アジェンダを決める時もあれば、決めずにその場の流れで進めることもあります。
「受け取る→自分に入れる→言葉に出す」という対話のサイクルを意識していて、これができている時もあれば、ギクシャクして喧嘩で終わる時もありますね。
1日2回って、すごく多い印象ですが。
そうですよね(笑)。でも1日に2回やることで、自然と仕事に意識が向いていくんですよね。
共同創業して、自分がこんなに甘っちょろい人間だったのかということに気付きました。仕事が好きな人間だと思っていたんです。だけど、一人だったら絶対サボってますよ。「まあいっか、今日は」みたいな感じで。それを自分の意識だけで「頑張らなきゃ!」ではなく、人の力も借りながら意識を向けることって大事なんだなと思っています。
対立も成長の糧:喧嘩の後の関係修復
話していて喧嘩になることもあるということですが。そんなときはどうするんですか?
だいたいパターンが決まっているんですよ。
対話が白熱して北山さんの言葉がきつくなっていくことがあって、そうすると僕は防御の壁を作るんです。すると北山さんは更にいら立って、その壁を壊そうと叩いてくる。こちらはどんどん壁を分厚くして自分の世界に入っていく…という悪循環ですね。
面白いのは、2人の回復パターンが違うことです。北山さんは怒りを発散したら綺麗さっぱり終わりなんですが、僕はその場ではフリーズ状態で、1~2時間後から徐々に効いてきて、4時間ぐらい引きずります。
その後はどうやって修復するんですか?
北山さんの方から「さっきはごめんね」と言ってくれることが多いですね。そう言われると、自分のぐわっとした気持ちがすっと引いて、「自分も悪いところがあったかも」という感じで場が落ち着きます。
第三者が入るとより効果的だと思います。お互いが今何を考えているかを、フラットな目で聞いてもらえると冷静になれるんじゃないかな。僕らは他の人や組織に対してはそれができるんですが、自分たち同士だとなかなか難しいですね。
でも、そうやって言い合った後も後腐れなく修復できるって素晴らしいですね。
我慢するより絶対に言った方がいいと思っています。どうせ抱えていてもにじみ出るものだから。北山さんの怒りや僕のどよんとした感じは、黙っていても周りに伝わってしまいます。それだったら言った方がマシです。
ただ、何でも言っていいとは思っていません。特に自分が落ち込んでいるときって健全じゃない状態だから、「これ言ったらマジで終わりじゃないか」と考えることもありますよ。でも最終的には「出さない」と決めて自分の中で落ち着かせるようにしています。
現場に入り込む「YURAモデル」の実践
中北さんのプロフィールに「現場に入り込んで対話を重ねる」とありましたが、これがYURAモデルの核心なんでしょうか?
そうですね。人事として最も大事にしていたのは、とにかく現場に行って話をすることです。仲良くなったらいろんなことを言ってくれるし、形式的な会議では出てこない本音が聞けます。
日常の中にもっと入り込んで、人と人とが会話するということを意識的にやってきました。それを定義づけたのがYURAモデルで、いい組織になっていくプロセスを形式化したものです。
中北氏の人生を変えたYURA体験
中北さんご自身の人生で、「ここで大きく変わった」というエピソードがあれば教えてください。
自分にとってのYURA体験ですね。これは結構擦り切れた話なんですが(笑)。
僕は昔から認められたい欲求がとても強くて、昇格や高い給料がビジネスパーソンにとって絶対的な正義だと思い込んでいました。ある企業で働いていたとき、最初の昇進は順調だったんですが、次のタイミングで昇進できなかったんです。人生で初めての挫折でした。
その3週間後、評価者の人とお酒を飲む機会があって、そこでもう滅茶苦茶怒りをぶつけたんです。「なんで俺を評価しなかったんだ」「何もわかってないくせに」って、夜中の3時まで延々と。
そうなんですね!そこまで怒っている中北さん、想像できないです。
そうですよね(笑)。僕も普段からイラッとすることはあっても、怒りをそのままの勢いでぶつけた経験はあまり記憶にありません。
思いっきり怒りをぶつけた次の日、それでスッキリしたかというと、そうじゃなくて。すごい虚無感というか、「自分は何にこだわっているんだろう」という自分の価値観を問い直すところにつながったんです。
その後、僕の怒りを聞いてくれた評価者の方から「中北君はコーチングを受けた方がいい」と言われて。最初はコーチングに対して抵抗があったんですが、「この虚しい気持ちのまま生きていくのは絶対に嫌だ」と思って受け始めました。
対話の導入で組織が変わる
なるほど。その経験から対話を意識するようになったんですね。
はい。1対1のコーチングから始まって、顧問の中村カズさんを通じて複数人での対話も体験しました。お互いが何に対して何を考えているかを場に出して共有していく、時には質問を通じて深めていく、その心地よさにすごく惹かれました。
対話って難しいイメージがあります。自分の思いを外に出すのが特に。
そうですね。実際そういう声は多く聞きます。
対話をするためには、本音を出せない理由を1つ1つ解きほぐしていく必要があると思います。
本音を出すことで何が起こるかわからない恐れや、一度本音を出したのにぞんざいに扱われた経験とか、いろんなことがあると思うんです。その信頼を築いていくことが、LiMiNALが対話を導入する企業と一緒に整えていく土壌作りなんじゃないかな。
みんなが本音を言えていない会社って多いんじゃないかな、と思います。それができたら雰囲気も良くなるし、安心感も生まれますよね。
僕たちは機械じゃなく人間なので感情があります。みんなが安心してここにいていいんだと思いながら活躍できれば、1人ひとりの人生がより良いものになって、組織もいいものになっていくと信じています。
以前の僕は、仕事は嫌なことをやってお金を稼ぐものだと思っていました。でも、その中でも安心感があって楽しくいられるなら、関係性の質がパフォーマンスにもマインドにも大きく影響するんじゃないかと思います。

新しいメンバーを迎えて
これから中北さんや北山さんと共にLiMiNALで働くにあたって、対話について学んでいるんです。今までは、仕事で自分から心を開くことはあまり得意としていなかったのですが、これからは自分の心を開いていきたいと思っています。
すごくありがたいです。ただ、自分だけが心を開いても相手が心を開かずに攻撃的な姿勢だと、攻撃を真正面から受けることになってしまう。だから、みんなが心を開くということが大切で、僕たちはそれを大事にしています。
素敵ですね!すごく楽しく、オープンに働ける気がしています。
きっと楽しいことだけでなく、しんどいことや時には喧嘩することもあると思います。でもそれも含めてオープンでいる、自分の感情にもオープンで、相手に対しても開いた状態で居続けることが大事なんでしょうね。
インタビューを終えて
今日お話を聞いて、中北さんの新たな一面を発見しました。結構情熱的に語るんですね。普段は聞き役のイメージでしたが。
聞き役に徹しているつもりは全くないんですが、よく言われますね(笑)。今日はインタビューだから自分の話をしたというのもありますが、鈴木さんが「自分の感覚を表明しやすい場」を作ってくれたのかなと思います。
表情を見ながら話すことの大切さを改めて感じました。
どういう表情をするかも、相手に与える印象として大事ですよね。当たり前ですけど笑顔で話すのと仏頂面で話すのでは全然違う。結局、いい場を作っているのは自分で、自分発信で作れることがたくさんあるなと思います。
緊張していましたが、とても話しやすかったです。
問われて答えることで、自分もいろんなことを考えているんだなと再認識できました。なんか最近何も考えずに仕事しているような気がしていたんですが、自己肯定感が上がりましたね(笑)。鈴木さんと僕の2人の関係性という意味でも、いい変化があった感覚があります。

